仕事で失敗するのが好きな人なんていません。失敗すれば怒られるし、自信もなくします。失敗したときの、あの嫌な動悸と緊張感。本当にツライですよね。
しかし、失敗を恐れて行動しないこと(逃げること)は、仕事や自分自身にとってマイナスにしか作用しません。
むしろ、失敗を恐れずに行動することが、新しい発見や成功につながるということを『失敗の科学』が教えてくれます。
- 『失敗の科学』の要点
- ・失敗の原因は「やる気や集中力が低いから」ではない
- ・失敗は自分のせいではなく、組織やシステムに問題がある
- ・罰則でミスは減らない。ミスの報告が減るだけ
- ・大多数の人は、失敗を認めたがらない(認知的不協和)
- ・成功の下には大量の失敗が眠っている
- ・頭で考えるよりも、行動して小さな失敗を改良していくべき
- ・成長型マインドセットの人は、失敗を成長の糧と考える
- ・固定型マインドセットの人は、失敗を「自分に才能がない証拠」と捉える
この記事では上記の中から太字の3つについて深堀りして紹介したいと思います。
やる気や集中力は失敗と無関係?
まずは【失敗の原因は「やる気や集中力が低いから」ではない】という点について。
人が失敗するときに「やる気がないからだ!」とか「集中しなさい!」みたいな叱責をされることがありますが、失敗をする原因は必ずしもやる気や集中力の欠如とは限りません。
むしろ、やる気があって集中力が高いときに失敗することもあります。この点は、本書で得た新しい知見でした。
どういうことかというと、過集中の状態になるとまわりが見えなくなってしまい、取れるべき対策(選択肢)が取れなくなってしまうことがあるということです。
つまり、集中しすぎてしまうと、防げる失敗が防げなくなります。
この本では「副操縦士の意見を聞き入れていれば墜落の危機を回避できたはずの機長」や「看護師の助言に耳を傾けていれば患者の命を救えたはずの医師」などの事例が出てきます。
どれも命に関わる仕事での失敗が例として出てくるので、身につまされる思いで読み進めました。
成功の下には大量の失敗が眠っている
【失敗は成功のもと】という言葉があります。あまりによく聞くせいで「いやいや、今さらそんな安い言葉を聞かされても…」という感じで卑下してしまいがちです。
しかし、よく聞くということは、真理である可能性が高い。そして、この本でもまさしく【失敗は成功のもと】ということが語られています。
だからこそ、失敗した人をむやみに叱ってはいけないし、自分自身も失敗して凹むだけではもったいないのです。
2009年1月、USエアウェイズの飛行機が上空でバードストライクによってエンジン停止となり、墜落の危機に見舞われました。
しかし、機長の素晴らしい判断と操縦テクニックによって川に着水し、乗員全員が無事に生還。
「ハドソン川の奇跡」と呼ばれるこの出来事によって、機長はメディアからも称賛を浴び、世間からは英雄として大いに讃えられました。
しかし、機長自身は決して偉ぶることなく、謙虚に以下のように語っています。
我々が身に付けたすべての航空知識、すべてのルール、すべての操作技術は、どこかで誰かが命を落としたために学ぶことができたものばかりです。
つまり、機長の成功も、これまでの航空事故という失敗の上に成り立っているということを述べているわけです。
失敗したその瞬間はもちろん苦しいですが、苦しさが大きければ大きいほど、将来的に得られる成功はもっと大きなものになるということを意味します。
成功の下には大量の失敗が眠っている。これを意識できるだけで、失敗に対する意識はガラリと変わるのではないでしょうか。
小さな失敗を重ねて、改良していく
何か新しいことを始めるとき、人は計画を立てます。しかし、計画が細かすぎるあまり「これは失敗しそうだからやめとこう」といった感じで、やる前から手をつけないという状態になりがちです。
しかし、失敗を恐れすぎてしまうと物事を始めることができません。やってみないとわからないのに「きっと上手くいかないから、他の方法を…」と考えてばかりで結局なにも始めることができないというのはよくある話です。
つまり、失敗を考えて行動を起こさないのはもったいないということ。そうではなく、まずは小さく始めてみて、小さな失敗を繰り返しながら改良を重ねていくべきです。
結局、”やってみないとわからない”というのが物事の本質なので、まずはとりあえず始めてみることが肝要。始めてみることで、計画段階では思いもよらなかった発見が出てきたりするのものです。
失敗を前向きに捉えるマインド
「失敗は成功のもと」という言葉が使い古されているのは、それが真理だからです。
仕事において失敗は不可避であり、誰1人として失敗からは逃げられません。だからこそ、失敗をもっと前向きに取られるマインドが不可欠だと思います。
失敗を糧にできる人間になれれば、たとえミスをしても「よし、この失敗を検証してみよう」という方向性にシフトできます。
失敗を前向きに捉える習慣が身に付けば、チャレンジすることも怖くなくなるので、生活がもっと豊かなものになるはずです。
この本は、自己啓発的な一面もありますが、「組織をどう変えれば失敗を減らし、失敗を活用できるか?」というのがメインテーマになっています。
ですから、失敗が怖くて動けない社会人だけでなく、経営者やリーダーとして組織論を知りたい人にもうってつけです。
事例が豊富でわかりやすく、納得感の強い1冊に仕上がっています。