ふだん何気なく読んでいる本は、読者の知らない流通網によって運ばれています。
全国にまんべんなく本を届けている出版流通は、非常に上手くつくられているのです。
しかし、その実態はなかなかわかりにくいのが事実。
本はどのように流通して、私たち読者の手に届くのでしょうか。
今回は出版流通にかかわるプレイヤーを3つに分けて、それぞれが果たす役割を図解で説明します。
本屋に並ぶ雑誌や書籍が読者に届くまで
まず、本の流通に関わるプレイヤーはおもに出版社、取次、書店の3つに分けられます。
そして各プレイヤーは以下の図のように、それぞれが関係して本の流通が行われます。

基本的な流れとして、まず出版社は自社の倉庫から本を取次(卸売り業者)に回し、流通を委託します。
本を受けとった取次は契約を交わしている書店に本を届けます。
取次は、いわば出版社と書店をつなぐ”橋渡し的”な役割を担っており、本を運ぶ仕事を行います。
出版社と書店の直接取引ではなく、なぜ取次が必要なの?
小売業界に共通することですが、ものを運ぶ役割というのはメーカーとは別で独立しています。
本をつくる出版社が書店に本を運ぶことはせず、取次に本を預けて運んでもらうのです。
なぜそんなことをするのでしょうか?言うまでもなく、それは大変だからです。
もし出版社が自分たちで本を全国の書店に配送しようとすると、莫大なコストと手間がかかります。
自分たちで業者を雇うこともできなくはないですが、どうしてもコストがかさんでしまうのです。
もっと効率的に素早く全国の書店に本を流通させるには、書籍や雑誌に特化した物流が必要です。
そのために、取次という本の専門物流業者が存在するのです。
書店は取次との口座を開く事で配本をしてもらえる
ここで、もし仮に取次が存在しないとどういった事になるでしょうか。
さきほど説明したとおり取次が存在しないと、出版社は自社の本を全国の書店に届けなければなりません。
刊行点数の少ない出版社であれば可能かもしれませんが、大きな出版社の場合、自社の本をすべて流通させるのは大変なことです。
ですから、取次が出版社の発行する本を集約して書店に配本を行っているのです。
反対にいえば、書店は取次に本を配送してもらえないとお店に本を並べることができません。そのため、書店は取次と契約を交わして口座を開きます。
なぜ”口座”と呼ぶのか?その理由は、取次が本の代金の精算機能も兼ねているからです。
取次は流通以外にも、お金の流れを管理している
取次は本を運ぶだけが仕事ではありません。じつは、お金のやりとりの中心的役割も担っています。
さきほど出版社が直接、本屋に本を配送するのは大変なことだという説明をしました。じつはこれ、お金のやり取りをするときにも同じことが言えます。
なぜなら、全国の書店1店舗ずつと出版社がお金のやり取りをしていたら、とんでもない手間がかかるからです。
そこで、出てくるのが取次会社の精算という仕事です。
出版社は取次に本を出荷することで、代金を受け取ることができます。ひとまずはこの時点で売り上げが発生します。
そして、取次は本を届けることで、書店から代金を払ってもらうという流れです。
ここでも取次会社は出版社と書店橋渡し的な役割を担っているわけです。
どこの書店に届けるか?新刊の配本は取次が決める
新刊の配本は基本的に取次が決めています。過去の書店の売り上げデータから、各書店にふさわしい数の新刊を配本するのです。これは非常に重要な役割といえます。この配本のことを「パターン配本」と呼びます。
パターン配本は、書店の過去の売り上げデータからムダのない最適な配本を行います。
たとえば、ある出版社が実用書の新刊を発売したとしましょう。
この実用書に対して、取次は、
「A書店は実用書がよく売れるから5冊、B書店は実用書があまり売れないから1冊だけ配本しよう」
といった具合に、過去のデータにもとづいて配本を行っているのです。
出版社は新刊を出すときに販売予測をして、一定の部数しか発行しません(だいたいこれだけ売れるだろうという予想を立てるわけです)。
ですから、あまり販売実績のない書店に新刊を多く配本してしまうと、多く売れている書店の店頭在庫がなくなってしまうのです。
言いかえると、売れない本屋に配本を多くしてしまうと返品が発生してしまい、売れる本屋に配本が少ないと売り損じが発生してしまいます。
本の流通は一般的な小売り業界の流通とは異なる部分が多いので、出版社・取次・書店がどのように関わりあって本が流通しているのかを整理して考える必要があります。