最近になって、ようやく「洋書の精読」がもたらす効果に気づくことができるようになった。
”ようやく”と書いたのは、過去に洋書の精読に挫折した経験があるからだ。
なぜ、洋書の精読ができるようになったのか?洋書の精読にはどんな効果があるのか?
そのあたりをくわしく書いていこうと思う。
ズバリ、洋書の精読とは
最初に「洋書の精読とは?」という話をしておきたい。
学問的な定義はないと思うが、洋書を精読する場合には以下のポイントを意識することになる。
- 洋書の精読
- ・わからない単語は辞書を引く
- ・英文法の理解、文の構造までしっかり読む
- ・内容もしっかり理解する
”精”読という字からもわかるとおり、とにかく量より質を重視して本を読んでいくのが精読だ。
洋書に限らず、英語リーディングの学習(教材)でも精読という言葉が使われることがある。
洋書の精読に挫折した理由
僕は過去に何度か洋書の精読に挑戦した経験があるが、そのたびに挫折していた。
挫折の理由はハッキリしている。自分のなかで「洋書多読」というものが絶対的な正義だったからだ。
洋書多読というのは、以下のポイントを意識しながら読むことである(洋書精読とは真逆のイメージ)。
- 洋書の多読
- ・辞書は引かない
- ・わからないところは読み飛ばす
- ・読めないと感じた本は、スグに読むのをやめる
「多読」という言葉からわかるとおり、とにかく質より量をこなすのが洋書多読の特徴である。
実際、これまでずっと洋書多読を続けてきて、量をこなすことで英語を読む力は確実に伸びたと思う。なので、洋書多読を否定するつもりはまったくない。
しかし、自分のなかで洋書多読が絶対視されてしまっていたせいで、「精読」に対して良くないイメージが醸成されてしまっていた。
つまり、「早く読み進めなきゃ」という気持ちが強すぎて【スローペースで読むこと=悪】のような感覚に陥ってしまっていたのだ。
「ゆっくり読んでいいんだよ」と自分を納得させる
僕の場合、洋書多読への意識が強く刷り込まれすぎていたせいか、洋書をゆっくり読むことに対して抵抗感(あるいは罪悪感)みたいなものがあった。
「こんなゆっくりしたペースで洋書を読んで、意味があるのか?」
「こんなに遅いと洋書を読む力が身につかない気がする」
というメンタルに陥っていた。
しかし、ある日ふと「英文法と英文リーディング学習のつもりで、辞書を片手に洋書を丁寧に読んでみよう」と思い立つ。なぜそのマインドになれたのか、自分でもわからない。
そして、そのとき根底にあったのは「とにかく、時間をかけてゆっくり読んでみよう。早く読む必要はない」という気持ちだった。
とにかく「ゆっくり読んでいいんだよ」という誰かの囁きが自分の心にこだましていたように思う(これだけ聞くとヤバイ奴)。
そんな”ゆっくりマインド”になれたことで、洋書精読に対する罪悪感も、いつしか消えていた。
超重要なのは「どの洋書を読むか?」
さて、ここからは僕なりに「洋書精読のコツ」をお伝えしていこうと思う。
まず最初に超重要なポイントとして挙げたいのが「本選び」である。
つまり、どの洋書で精読をするか?というのがかなり重要だ。
選ぶべき洋書をひとことで表すなら「自分の英語レベルに合っていて、興味のあるジャンルの本」になる。
わからない単語が1ページに3つ以内
「わからない単語が1ページに3つ以内」の洋書を選べば挫折しにくいというのは、洋書”多読”においてよく言われる話である。
「わからない単語が1ページに3つ以内」であれば、わからない単語も推測読みによって意味を理解できるようになる。だから、辞書を引かずに読めるわけだ。
反対に、わからない単語が1ページに3つを超えてくると理解がむずかしくなる。
もちろん、洋書のジャンルや本文の文字数によって変動する話ではあるので一概にはいえない。
とはいえ、僕も実際に洋書を読んでみて実感したが「わからない単語が1ページに3つ以内」というアドバイスはけっこう役に立つことが多い。
正直、1文ずつ完璧に理解するのはシンドい
「わからない単語が1ページに3つ以内の洋書を選ぶべき」というのは、洋書”精読”においても大きな意味を持つ。
なぜかというと、たとえ洋書精読の崇高なマインドを手に入れたとしても、結局のところ辞書を引くのは面倒だからだ。やっぱり、辞書を引く回数は減らしたいのが本音である。
辞書を引く必要がなく、文法も内容も理解できる箇所が多ければ多いほど、精読の負担も軽くなる。
今回、僕が洋書精読の良さを実感できたのは、まさしく「わからない単語が1ページに3つ以内の洋書」を読んでいるときだった(たまに超えることもあるけど)。
いくら時間をかけて読む精読といえど、やっぱり負担は軽いほうが良いに決まっている。
「読めども読めども辞書を引くばかりで嫌になる」というのは、洋書精読で挫折する最たる要因だ。
だから、自分の英語レベルにあった洋書を選ぶということが、なによりも優先されるべきである。
精読する価値がある本を選ぶ
英語レベルもさることながら、興味を持って読める本かどうかも重要だ。
洋書精読は時間がかかる。時間がかかるということは、ところどころに「心のスキ」みたいなものが生まれる。
つまり、読んでいるときに「これ、本当に読む意味あるのか?」とか「時間をかける価値はあるのだろうか…」という迷いが生じるのである。
そうなったとき、自分が楽しく興味を持って読んでいる本じゃないと、その迷いに抗えない。
だから、自分が心から「この本は面白いし、時間をかけてでも読みたい」と思える本でなければいけない。
僕は「読みたい本」だけを、時間をかけて選んできた。そのおかげで、挫折を乗り越えることができたと思っている。
洋書精読を成功させたければ、自分の気持ちに妥協することなく「本当に読みたいと思える本」を選んだほうがいい。
もちろん【読みたい本=読める本】とは限らない。自分の英語レベルと照らし合わせて「英語レベル的にも読めるし、なおかつ読みたい本」を見つける必要があるというのは悩ましいところだ。
洋書多読のやり方はいたってシンプル
ひとつの例として、僕がいま精読をしている“The Culture Map”という洋書をもとに洋書精読の方法を紹介したいと思う。
『異文化理解力』という邦訳版も出版されているが、タイトルからもわかるとおり、国ごとの文化の違いをわかりやすく紹介している本である。
洋書精読のやり方についてはいろいろあると思うが、僕はいたってシンプルなルールしか決めていない。
- 洋書多読のやり方
- ・わからない単語にマーカーを引き、余白に意味を書き込む
- ・文法や文構造の理解で苦戦した箇所には下線を引く
洋書を精読するときにやることは、上記の2つだけである。
以下のように、わからない単語にマーカーを引き、余白にはその単語の意味を書き込む。
「本に書き込むのは抵抗がある」という人もいると思うが、僕は本を汚して読むほうが”身になる”と思っているから、容赦なく書き込みをしている。
わからない単語にマーカーを引いて意味を書き込むのは、そこそこ面倒な作業ではある。
ただ、あとから振り返ったときに、わからない単語がひと目でわかったほうがいいと思うから、僕は線を引くようにしている。
また、あとで書評を書くときのために、印象に残ったページには自分なりの感想や意見も書き込むことがある。
さきほど説明したとおり、この作業は「ゆっくり読んでいいんだよ」と自分を落ち着かせながらやると精神衛生的に良い。
読み急いだり、英語学習に対して焦る気持ちがあると、線を引く作業が一気にシンドくなるので要注意。
蛍光マーカーはフリクションがGood
これは余談だが、洋書に書き込むときのペンはフリクションが良い。
なぜかというと、洋書のペーパーバックは紙質が良くなく、インクが裏写りする可能性が高いからだ。
一般的なインクの蛍光ペンだと、筆圧を少し上げるだけでスグに裏写りしてしまう。
フリクションのペンであれば、インクが裏に滲む心配もないので、安心してマーカーを引ける。
ただ、フリクションをはじめとする市販の蛍光ペンは色がキツく、本体の色も派手なのでちょっと目に痛い。
僕はいろいろ試した結果、いまは無印良品のラインマーカー(からしいろ)に落ち着いている。
筆圧に気をつければ裏写りもしないし、色もやさしい。なによりシンプルな見た目が良い。そして、安い(1本50円)。
引きやすい辞書は必須アイテム
洋書精読に欠かせないアイテムが「辞書」である。効率的な精読に、良い辞書は欠かせない。
さて、どんな辞書を使うか悩むところだが、僕は「辞書 by 物書堂」というスマホアプリに3つの辞書を入れて使っている。これは非常におすすめ。
以前までEX-wordの電子辞書を使っていたこともあったが、文字の打ちやすさや画面の反応速度などを考えると、やはりスマホアプリのほうが使いやすく感じた。
結局、手元にいつもあるスマホで調べ物をするのが一番気軽だし、洋書精読のアクションも起こしやすくなる。
英語辞書の横断検索が超便利

単語を入力すれば、複数の辞書を横断的に検索できる
ちなみに、「辞書 by 物書堂」というアプリは、複数の辞書を入れて横断検索ができる仕様になっている。
英単語を入れると、インストールされている辞書(僕の場合3つの辞書)をまとめて調べることができる。
だから、たとえば「この辞書だとしっくりくる英訳が載ってない」とか「そもそも、この辞書だと知りたい単語の語義が載ってない」なんてときも、横断検索が便利だ。
僕が使っているのは以下の3つ。
- 【ウィズダム英和・和英辞典 2】
- 【研究社リーダーズ+】
- 【研究社新英和大辞典】
正直、【研究社リーダーズ+】【研究社新英和大辞典】は引くぐらい高額なのだが、洋書を読むときには大いに役立っているの買ってよかったと思っている。
最初はウィズダム英和・和英辞典 2だけで十分
僕が洋書精読をするときは、基本的に【ウィズダム英和・和英辞典 2】という辞書を使っている。【ウィズダム英和・和英辞典 2】は解説も丁寧で、収録単語も多いので、これだけで十分戦える。
なので、洋書精読を始めるうえで、とりあえず【ウィズダム英和・和英辞典 2】だけを揃えればOKだと思う。
ただ、洋書の英語レベルが上がっていくと【ウィズダム英和・和英辞典 2】には載ってない単語も出てくるので、そうなった段階で【研究社リーダーズ+】【研究社新英和大辞典】などを買い揃えればOKだ。
Kindle で洋書を読むのが最効率
ここまではペーパーバックで洋書を読むことを前提として話をしてきたが、実際のところKindleで洋書精読をしたほうが圧倒的に効率がいい。
僕はペーパーバックで読みたい気分のときはペーパーバックを買うし、そうじゃないときはKindleでも洋書を読んでいる。
Kindleの素晴らしいところはたくさんあるが【ハイライト(線)が簡単に引ける】【辞書が内蔵している】という2点が特に優れている。
洋書精読において「いかにスムーズに英単語に意味を調べられるか?」というのは非常に重要だ。
Kindleは、英単語をタップするだけでスグに語義が表示されるので、もはや「辞書を引く」という感覚ではない。

Kindleの辞書機能が便利すぎる
ちなみに、Kindleアプリをスマホに入れれば、専用端末がなくても読める。
さらに、Kindle Unlimitedを使えば、200万冊を超える本が読み放題になる。
Kindleでの洋書精読は本当に素晴らしい。ペーパーバックにこだわりがない人は、ぜひ Kindle および Kindle Unlimited を試してみて欲しい。