「キング牧師って名前は聞くけど、実際に何をした偉人なのかは知らない」という人は多いと思います。
僕も「黒人差別と戦ったすごい人」というぐらいの知識しかありませんでした。
今回は、わかりやすい英語で書かれたキング牧師の伝記 “The Story of Martin Luther King Jr” をレビューしつつ、彼の生い立ちから、暗殺されるまでのストーリーを紹介していきたいと思います。
黒人と白人がハッキリ差別されていた時代

Martin Luther King, Jr.
キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)は黒人差別撤廃運動のリーダーとして活躍した人物です。
彼が活躍した1960年代のアメリカは黒人差別が当たり前におこなわれていました。
「バスのなかでは黒人が白人に席を譲らないといけない」とか「水飲み場は黒人と白人で分けられていた」という時代だったんですね。しかも人種差別は、法律で合法化されていたわけです。
そんな状況を変えるべく、彼は黒人差別と戦っていったわけですが、キング牧師の運動の特徴に非暴力主義があります。
つまり、暴力に訴えることなく、デモ行進や反対運動で差別をなくしていこうというわけです。
その一例として、sit-ins(座り込み)があります。1人またはそれ以上でその場を占拠することで、社会的な変化を求める運動です。
In Atlanta, Martin organized events like sit-ins. Sit-ins were nonviolent protests where people refused to move from segregated areas. Throughout the South, sit-ins were popular, especially in shops and restaurants.
非暴力・不服従といえばインドのガンジーが有名ですが、キング牧師はまさにガンジーの影響を受けていたそうです。1959年にはキング牧師は夫婦でインドに訪問しています。
In February 1959, Martin and Coretta traveled to India. Martin became even more inspired by Mahatma Gandhi’s life and teachings. When the couple returned, Martin started planning more nonviolent protests.
“I have a dream.” が生まれた背景
キング牧師を語る上で欠かせないのが、”I have a dream.”という演説です。超有名なので、聞いたことがある人も多いでしょう。
“I have a dream.”の演説には反復法というものが用いられています。同じフレーズを演説のなかで何度も繰り返すことで、その言葉とそのあとに続く内容を強調することができます。
引用されるときは切り取られることが多いですが、じつは演説のなかで”I have a dream.”が合計で8回も使われています。
この演説のなかで特徴的かつ有名なのが、以下の内容です。
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
ざっくり訳すと「かつての奴隷の息子と、かつての奴隷所有者の息子が同じテーブルにつくことが夢である」という内容です。理想の社会がわかりやすく表現されており、いろんな場面で引用されているので非常に有名です。
この一節は、キング牧師がかつて受けた黒人差別が大きく影響しているのではないかと思います。
キング牧師には少年時代に白人の友達がいたのですが、その父親から「黒人とは遊ばせない」と言われ、友達を失ってしまったというツラい過去があります。
Martin’s first best friend was a white boy. But the boy’s father told them they couldn’t be friends anymore because Martin was black.
このキング牧師の過去を知ってから”I have a dream.”の演説を見ると、自分の少年時代の経験がもろに反映されていて、胸が詰まる思いがします。「かつての奴隷の息子と、かつての奴隷所有者の息子が同じテーブルにつくことが夢である」というのは、まさに自分の過去を克服するためのフレーズだなと。
暗殺により、39歳という若さで死去
これほど大きな影響力を持つリーダーでしたが、残念ながら39歳という若さで亡くなってしまいます。
病気であればまだ良かったのですが、キング牧師は暗殺によって命を落としてしまうのです。
On April 4, 1968, Martin’s life ended when he was assassinated standing on the balcony of the Lorraine Motel in Memphis. The man who killed him, James Earl Ray, was a racist who did not believe in equality.
キング牧師はメンフィスにあるホテルのバルコニーで銃弾に倒れてしまいます。暗殺犯の James Earl Ray は禁錮99年の判決を受け、1998年に刑務所内で死去しました。
キング牧師がずっと非暴力主義で運動を続けていたにもかかわらず、暴力で解決しようとした暗殺犯はあまりに短絡的で自己中心的です。
39歳という若さで亡くなったキング牧師。”たられば”にはなりますが、「彼がもっと長く生きていたら、現在のアメリカの黒人差別はもっと改善していたのだろうか…」と考えずにはいられません。